2012年3月11日日曜日

Tosaburo projects の 始まり  カーライルがクロムウェルを・・・

Tozaburo project  の 本当の始まりは、次のエピソードにあるかもしれない。

藤三郎が日本醤油醸造会社の失敗で、全財産を投げ出し社長を辞任した。
マスコミから指弾を受け、世間から詐欺師・山師とののしられ家に逼塞していた
そのとき、心友、留岡幸助が自転車で慰労におもむいた。
藤三郎はすべての訪問を断っていたが、留岡が来たことを知って喜んでむかえ入れた。
そのときのありさまを後に留岡は以下のように回想している。

カーライルがクロムウェルは奸雄ではなく、千古の大忠臣で、真に国家・社会のためにその身をささげたことをその雄勁なる筆をふるって、クロムウェルの誤った評価をのぞいたように、「きっと君、鈴木藤三郎が国家・社会のために報徳の精神をもって生涯をささげたのだということが評価されるであろう」と留岡幸助は慰めたのだ。

きっとその日は来る、藤三郎プロジェクトもまた鈴木五郎氏の「黎明日本の一開拓者」の一連の伝記、森町報本社の「ドラマ藤三郎の報徳」に引続くものなのである。

それは鈴木藤三郎氏の「願文」を世界に未来に実現させようということにほかならない。




真に惜むべき人 本会評議員家庭学校長 留岡幸助


  ◎慰問の夕
その後鈴木氏の大失敗の噂を耳にしたので、早速予はこれを訪問せんがため、黄昏時(たそがれどき)から自転車を飛ばして、小名木川の家を訪問したのである。時は一昨年も将に暮れんとする12月23日の晩の事でした。
その時番頭が出て来て、「実は非常な場合でして、誰にも会われないのですが、あなたがいらっしゃったことを伝えますと、非常に喜ばれてお会いするとのことでした」といった。それから部屋に通ると、すぐに鈴木氏が出て来られ、老母(おばあさん)や、養子や、番頭まで出て来て、いろいろ精神上の話が出た。
その時、鈴木氏がいうのに「昨日130万円の責任を引き受けて会社を出てしまった。自分はこれまで10年ごとに大失敗をして、今回で3回目である。これを航海に譬えると前2回は難破したのであったが、まだ船に乗っておったからよかったが、今回は船まで取られたのであるから、大いに弱った」と嘆息しておられたのであります。
そこで自分がいうのに「それは君にも似合わぬ弱音を聞くものかな。一体これまでいろいろ専売権を得た発明は誰がしたのか、君の頭脳(あたま)がしたのではないか、すれば頭脳が残っておる間は大丈夫でないか」と励ましたことであった。

◎失敗の原因について自ら語る
 鈴木氏は、最後の失敗の原因について語っていうには、小名木川では、300万円の資本で、好評を博したのであったが、岩下清周氏がやって来て、君一個の事業として小資本でやるよりは、他の資本をも集めて、一千万円の資本としてやったらよかろうと勧誘したのに、つい乗ったのが、そもそも失敗の原因であった。
300万円にするのには、多くの年月を要して少しずつ基礎を固めつゝ進んで来たのであったが、一躍して700万円を増資してにわかの成長をしたのが自分の失敗であった。
今度は実に地雷火にかゝったようなもので、粉微塵にされてしまった。
これは青年実業家の好規鑑である。ただ遺憾に思うのは、鈴木は始めから山師であるという世評である。
もし自分が真に山師であるならば、自分が最大の株主になるような事はしないはずであるといって、世評に対する不満の意を漏らしたのである。

◎紛々たる世評を意とすることなかれ
 そこで自分はいうのに、それは君の平生にも似合わぬ繰言である。
天下の人が皆、君を奸物であるといっても、それは皆利害の関係から君を評するのである。
しかし自分のごとき、君とは何ら利害の関係がない人間が、君と共に公益のために尽くさんがために交わっておるのである。
それ故自分は、自分の経営する家庭学校の事業のためには君を煩わすことをしないのである。これは公益をもって交わろうとの考えがあるからである。
自分が聞くに、英国のクロムウエルは、多年奸雄と定(き)まっておった。ところがカーライルが出て、その雄勁なる筆を揮(ふる)って、クロムウエルは千古の大忠臣で、真に社稷のためにその身の毀誉を顧みなかったのであるといって、冤(えん)を雪(そそ)いだのである。君もこの際、泛々(へんへん)たる毀誉褒貶を眼中に置かず、前途の事を考えられた方がよかろうといって慰めたことであった。
ちょうどその際クロムウエル伝の翻訳が出たから、翌日その書籍(ほん)を贈って置いたことである。
その際自分は、ちょっと横を見ると、老母が私を拝んでおるのが眼に入ったが、その当夜の光景は真に厳粛な光景で今もなお眼前に見るごとき心地するのである
(略)」
「報徳産業革命の人 報徳社徒鈴木藤三郎の一生 鈴木藤三郎氏顕彰第1集」p206-208

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